「放課後等デイサービス」、通称・放デイ。その定義として厚生労働省が発表しているものは、「支援を必要とする障害のある子どもに対して、学校や家庭とは異なる時間、空間、人、体験等を通じて、個々の子どもの状況に応じた発達支援を行うことにより、子どもの最善の利益の保障と健全な育成を図るもの」とされています。簡単に言うと、発達に心配のある児童が、放課後や週末を使って、それぞれの発達に応じた活動を体験できる場所のこと。
子どもの発達を心配する親御さんがこんなにいるのに、放デイという存在はそれほど知られていないのが現状です。この記事では、意外と知らない放デイのあれこれをまとめています。お子さんの発達が心配…そんな悩みを抱えた親御さんに届きますように。
徹底解説!放デイって一体ナニ!?
お金はかかる?
利用費用の1割が自己負担(9割は公費負担)となります。1回の利用で1,000円前後のところが多いようです。また、世帯の所得に応じて負担額の上限があり、1か月に利用したサービス量に関わらずそれ以上の費用は生じない仕組みになっています。ただし、事業所によっては、おやつやお弁当を発注したり、イベント等を実施したりすると別途費用がかかることも。
どんな手続きが必要?
放デイを利用するには、主に以下のステップを踏む必要があります。
- 利用相談をする(各市町村の福祉相談窓口)
- 利用したい施設を見学する
- 受給者証を申請する
- 受給者証が発行されるかどうか審査がある
- 受給者証の支給が決定したら、郵送で届く
利用したい施設を見学するよりも前に、受給者証を申し込んだ方が良いのではないかと思うかもしれませんが、実は受給者証を申し込む際に、「利用予定の施設」を記入する欄があることも。そこにスムーズに記入できるよう、利用したい施設はあらかじめ決めておくことをおすすめしますよ。
具体的にどんなことをする?
療育では、それぞれの子どもたちに合わせた活動が行われるので、決まった授業や取り組みがあるわけではありません。主に発達障害のある子どもが対象となり、個々の発達支援計画に応じてその子の良さを伸ばすほか、苦手を克服するためのアクティビティがプランニングされます。
- 日常生活(着替えや食事など)を全部自分でできるようにサポートする
- 助けが必要な場合には、自分から援助要請を出せるようにする
- 他者との交流を深め、適切なコミュニケーション方法を習得する
- 学校や家庭とは違う、心の居場所を作る
- 成功体験を積める遊びを経験し、自己肯定感を高める
など、発達障害のある子どもたちが、社会に出てものびのび自分らしく生きられるため、そして社会に適応し自立した生活を送っていけるための、いわば「訓練」を、遊びやイベントを通して習得していけるサービスなんです。
学童との違いは?
一言で言うと学童は、働いていて日中家にいられない親御さんのために、放課後に子どもたちを”預かる”場所。宿題を見てくれたり、場所によってはおやつが出たりと、保育園の小学生版というイメージです。一方の放デイは、”預かり”を目的とはしておらず、子どもたち1人1人に合った方法で療育を行う施設です。学童が小学生以下の子どもに限られるのに対し、放デイは高校生までを対象としている点も、大きく違っていますね。
学童は、両親の就労証明書などが必要ですが、放デイは両親が働いていなくても利用できます。ただし、子どもが放デイで療育を受ける必要があるかないかを判断するため、自治体が発行する「障害児通所受給者証」が必要になります。受給者証がない=定型発達児とみなされるのです。
実際に通っていた人が感じる「放デイ」のメリットとは
放デイに通いながら幼少期を過ごし、社会に出て立派に働いている人はたくさんいます。そんな経験者が感じたという、放デイのメリットをまとめてみました。
コミュニケーション力が上がった!
自閉症やADHDという、比較的最近呼ばれるようになった発達障害を患う人は、一見定型発達児と変わらないように見えます。少し話したくらいでは、発達障害があることにも気づかないほどに、定型発達児と紙一重な部分も多いんです。しかし、発達障害を持つ当人たちにとっては、コミュニケーションが苦痛であるなど、生きづらい場面がたくさんあります。それを、丁寧できめ細やかな指導で克服させるのも、放デイの特徴。子どもたちが緊張しすぎない小規模集団の中で、「社会」を学ぶことができるのです。
学習に追いつくことができた!
発達障害を抱える人の中には、年齢相応の学習から遅れをとっている子も少なくありません。計算や読み書きなど特定の学習が苦手だったり、先生の話を長時間聞いていることができなかったりと、授業についていけない子も多いものです。放デイでは、そんな学習面の悩みにも対応しています。学校の学習範囲だけではなく、個別カリキュラムを組んでくれるところもあり、放デイのフォローにより学習に自信がついた!という人も多いんですよ。
基本的な社会性を学べた!
ルールを守る、集団生活に適応するなど、定型発達児にとっては簡単にこなせることも、発達障害児にとっては難しい場合があります。これはわがままなのではなく、特性なので、実は無理やり順守させようとしても逆効果なんです。そんなときも、放デイでその1つ1つの社会性の重要さを学ぶことができ、学校や社会で応用できたという成功例も数多くありますよ。
まとめ
意外と知られていない、放デイのあれこれ。お子さんの発達障害や発達遅延で、幼児期から児童発達支援サービスを利用している人も多いと思います。しかし、小学校に入ってから、「うちの子、まわりと比べて発達が遅いかも?」と気が付くパターンも多くあることでしょう。そんなとき、まわりに放デイというサービスがあることを知っているママ友が、果たしてどれくらいいるでしょうか。1人でも多くの親御さんがこの放デイというサービスに出会い、お子さんの発達や関わり方、学習面や精神面での良い変化が見られることを祈っています。